「やられたね、月ちゃんに。」

月ちゃんチには、いわゆる「嫁」の良子さんがいます。
良子さんは実は月ちゃんをしのぐ実力の持ち主です。
でも、彼女は決して張り合わず、月ちゃんの言うとおりに望みをかなえ、仕事をし、家を切り盛りしています。
それは誰に対してもそうで、決して相手をつぶさず気持ちを汲んで。
だからって、自分を殺しているわけじゃないんですよ。

良子さんがいるから、月ちゃんチは歳かさの人が威張っていられる家。
それは大切なことですよね、今の時代に希有なこと。

「ただいま、ばあちゃん。帰ってきたよ。」
仕事を終えて病室に走りこんできた彼女の声を聞いて、同時にふーっと息を吐いて旅だったそうな。


「じいちゃんの命日のお経さんをみんなが集まってお参りする日に一緒に座敷でききたかったんだわ。そのためにはじいちゃんの日の1日前でないと間に合わなかったんだわ。」


良子さんとその家族は次々語ります。
その日が約束の日であったと思えるたくさんの出来事。
そして良子さんは言います。

「やられたね、月ちゃんに。」

そういって笑います。
家族も泣きながら笑います。

良子さんがそうしてきたように、3人の孫もその連れあいもみんな当然のこととして介護をしていました。
そして連れあいの命日の前日であったこの旅立ちに納得しているのです。





仮通夜、通夜とお参り、手伝いに伺いました。
菊の花が波打つように作られたとても立派な祭壇です。
350人を超える人が集まっていたと思います。
明日告別式ですが、私は今夜最期のお別れをしてきました。








北海道の葬儀をご存じない方は驚くでしょうが、この地では集まった親族で記念撮影をします。
なかなか会えない時代の名残なのでしょう、きっと。
この話はまたいつかしてみましょうか。


写真も無いのに長々読んでいただきありがとう。













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